ベリー・フール

イギリスでは初夏になるとたくさんのベリー類が旬を迎えます。摘みたてのフレッシュなベリーは、そのまま食べたりお菓子にして豊かな自然の恵みを楽しみます。


イギリスにはベリー類を使ったレシピがたくさんありますが、その中でも特に簡単で、素材の美味しさを味わえるデザートが「フール」です。


今回はイギリスの家庭で作られている絶品デザート「ベリー・フール」をご紹介します。火やオーブンも使わないので、暑い季節のお菓子作りにもぴったりですよ。



フールってどんなデザート?

フールは泡立てた生クリームにフルーツのピューレを混ぜ込んだ、イギリスの定番デザートです。


冷やしていただくデザートなので、イギリスでは暑い季節になるとよく登場します。ガラスに盛り付ければ、見た目も涼しげで素敵ですね。


フールは17世紀頃から作られている伝統的なデザートで、当時はフルーツのピューレに卵を加えて濃度をつけたものでした。


そこからローズウォーターで香りをつけたり、生クリームを加えたりと時代と共にレシピも変化していったようです。


現在では、生クリームにヨーグルトを加えた、より軽い食感のものが人気で主流になっています。


フールに使うフルーツは、グーズベリー、ブラックベリー、ルバーブなど酸味の強いものが人気ですが、特に決まりはありません。


フレッシュなフルーツが手に入らなかったら、冷凍フルーツを使ってもいいですし、缶詰でも代用できます。


とにかく簡単に作れて美味しい!それがフールの良いところ。お店で食べるかしこまったデザートとは違う家庭の味で、おやつや食後のデザートに親しまれています。



イギリスの初夏の味“グーズベリー”

日本であまりなじみのないグーズベリーは、イギリスの初夏を知らせる大事なフルーツのひとつです。


きれいな薄緑色の小さな実で、日本名はセイヨウスグリといいます。ケーキの上に飾られる酸味の強い赤い実(レッドカラント)と色は違いますが、見た目や味はそっくりです。


非常に酸味が強いため、生食せずにジャムやコンポートにしていただきます。イギリスの甘いお菓子のアクセントにもぴったりで、酸味のある爽やかな味わいが楽しめます。


日本でフレッシュのグーズベリーは中々手に入りませんが、赤い実のレッドカラントで代用してフールを作っても美味しそうですね。



フールの名前の由来は・・

可愛らしい響きの名前ですが、フールと名付けられた由来には諸説あります。


フール(Fool)はエイプリルフールの綴りと一緒で、英語で「愚か者」や「ばかな人」などの意味があります。


こんな美味しいスイーツに何でこんな名前をつけたの?と驚きますが、そんな人でも作れるほど簡単なデザートという意味かも知れません。


そしてもうひとつの説が、フランス語の押し潰すという意味の「Fluer(フール)」が語源という説。


どちらが正しいか、はたまた違う語源があるのか真相は分かりませんが、フールが誰からも愛される、とびきり美味しいデザートということは変わりませんね。



おうちでつくるイギリスの家庭デザート「ベリー・フール」レシピ

とにかく簡単で手間なし!フルーツピューレとクリームを合わせるだけで作れるので、お菓子作りが苦手な方にもおすすめです。


見た目もきれいで見栄えがいいので、パーティーのデザートなどおもてなしの時にもぴったりですよ。


今回は冷凍ミックスベリーを使った、手軽に作れる「ベリー・フール」をご紹介します。


材料

  • 生クリーム/200㏄
  • 水切りヨーグルト/100g(200gを水切りして100gにする)
  • グラニュー糖/30g
  • バニラエッセンス/数滴(省略可)

 

  • 冷凍ミックスベリー/300g(飾り用に少しとっておく)
  • グラニュー糖/30g
  • レモン汁/少々

作り方

  1. ミックスベリーピューレを作る。フードプロセッサーに冷凍ミックスベリーを入れ、グラニュー糖、レモン汁を加えて30分ほど置いておく。ベリーが溶けて水分が出てきたらミキサーをまわしてピューレにする。冷蔵庫で冷やしておく。
  2. ボウルに生クリーム、グラニュー糖、バニラエッセンスを入れてハンドミキサーで、7分立てに泡立てる。水切りしたヨーグルトを加えて優しく混ぜ合わせてクリームを作る。冷蔵庫でしっかり冷やしておく。
  3. ガラスの器に②のクリームをいれ、①のピューレを垂らす。大きくざっくりと混ぜ、マーブル模様が消えない程度に軽く合わせる。飾り用にとっておいたベリーを上にのせて出来上がり。クッキーやビスケット、メレンゲなどを添えるとさらに美味しく召し上がれます。

POINT

  • 冷凍ミックスベリーは冷凍ブルーベリーなどでも代用可能です。
  • 季節のフレッシュなフルーツを使って作るとより美味しいです。酸味の強いルバーブやラズベリーの他、マンゴーやキウイ、桃などもおすすめです。
  • 水切りヨーグルトは、市販のギリシャヨーグルトで代用できます。
  • ピューレやクリームを作ったら、それぞれ冷蔵庫でしっかり冷やしておきましょう。食べる前に両方を合わせて盛りつけます。


フールは時代を超えて愛される英国デザート!

フールは長い歴史の中でイギリスの人々に愛されてきた家庭のデザートです。それを題材にした「とびきりおいしいデザート/エミリー・ジェンキンス文」という絵本があります。


絵本にはフールが登場した300年前から現代までの4つの時代と、4つの家族の物語が書かれています。


それぞれの時代でフールを作る時に使う道具や保存方法が異なっていて、例えば300年前は小枝を束ねたもので生クリームを泡立てていたり、丘に掘った穴ぐらに氷を置いて冷やしたりしていました。


今はハンドミキサーであっという間にホイップできますし、冷蔵庫でしっかり冷やすこともできますが、当時の人達は時間と知恵を使って作っていたんですね。


どの時代の人たちもフールを食べた時の喜びは一緒だったようです。それは現代の私たちも同じですね。


家庭に受け継がれるイギリス伝統デザート「フール」。ぜひ食後の紅茶と共にお楽しみください。